吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした所で
ニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で
一番獰悪な種族であったそうだ。
この書生というのは時々我々をつかまえて
煮て食うという話である。
CAT1
そうして其穴の中から時々ぷうぷうと烟を吹く。
どうも咽せぽくて實に弱つた。
是が人間の飲む烟草といふものである事は漸く此頃知つた。
此書生の掌の裏でしばらくはよい心持に坐つて居つたが、
暫くすると非常な速力で運轉し始めた。
書生が動くのか自分丈が動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が惡くなる。
CAT3
2018.02.09 新着 | 縁は不思議なもので、もし此竹垣が破れて居なかつたなら、 |
2018.02.09 新着 | 吾輩は遂に路傍に餓死したかも知れんのである。一樹の蔭とはよく云つたものだ。 |
2018.02.09 新着 | 此垣根の穴は今日に至る迄吾輩が隣家の三毛を訪問する時の通路になつて居る。 |
2018.02.09 新着 | 偖邸へは忍び込んだものゝ是から先どうして善いか分らない。其内に暗くなる、腹は減る、 |
2018.02.09 新着 | 寒さは寒し、雨が降つて來るといふ始末でもう一刻も猶豫が出來なくなつた。 |