吾輩は猫である。名前はまだ無い。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした所で
ニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で
一番獰悪な種族であったそうだ。

この書生というのは時々我々をつかまえて
煮て食うという話である。

CAT1

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

然もあとで聞くとそれは書生といふ人間中で一番獰悪な種族であつたさうだ。此書生といふのは時々我々を捕へて煮て食ふといふ話である。然し其當時は何といふ考もなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

然もあとで聞くとそれは書生といふ人間中で一番獰悪な種族であつたさうだ。此書生といふのは時々我々を捕へて煮て食ふといふ話である。然し其當時は何といふ考もなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。

吾輩は猫である。名前はまだ無い。

然もあとで聞くとそれは書生といふ人間中で一番獰悪な種族であつたさうだ。此書生といふのは時々我々を捕へて煮て食ふといふ話である。然し其當時は何といふ考もなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。

そうして其穴の中から時々ぷうぷうと烟を吹く。
どうも咽せぽくて實に弱つた。
是が人間の飲む烟草といふものである事は漸く此頃知つた。

此書生の掌の裏でしばらくはよい心持に坐つて居つたが、
暫くすると非常な速力で運轉し始めた。
書生が動くのか自分丈が動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が惡くなる。